主張

エンジニアの長時間労働は無謀な計画が原因

先日IT業界に身を置くものとしては気になるニュースを目にしました。

過労によるうつ病などの精神障害(精神疾患)は20人、うち自殺は4人(未遂含む)――。

これは、IT企業を含む情報通信業の従業員が、業務による過労自殺等として2015年度に東京都内で労災認定された数である(東京都には、情報通信業に属する全国の従業員の50%超が集積している)。

従業員数当たりの比率では、精神疾患、自殺ともに他産業の2倍以上。特に精神疾患の割合では、建設業などを超えてワースト1である。もちろんこの数字は氷山の一角であり、労災の申告や認定に至らなかったケースも多数あるだろう。

出典:過労による精神疾患でワースト1、IT業界が変われない理由

さらにこの記事ではIT業界は長時間労働が最もひどい業種の一つで、その理由の一つに客先常駐を挙げています。

客先常駐

システム開発は規模が大きくなればなるほど全体像が見えにくくなります。特にITに疎いユーザーの場合、自らもどのようなシステムを欲しているのかさえ分かっていなかったりしますから。

なので客先に常駐して細かいところまで要件や仕様を詰めながら開発するというスタイルがシステム開発の一般的なスタイルになるんですよね。

確かにこの記事で言っているように客先に常駐していると、ユーザーはベンダー側の人間が何時まで働こうと気にしてません。気にするのはオフィスの退出時間だけ(笑)ただし、これは請負契約の場合であって、時間精算の場合はユーザーから厳しい目を向けられますけどね。

本来であれば、常駐している人間の勤務時間を管理して行き過ぎた残業を抑制する役目はその上司であったり経営層だったりするわけですが、実際は逆にもっと働けとプレッシャーをかける始末・・・。

無謀な計画を立てるユーザー

でもこの記事は長時間労働の根本的問題を語っていないと思います。

というのも、自社開発でも状況はあまり変わりません。私も今までフリーランスとして自社開発の現場で仕事をしたことは何度もありますが、進捗が悪けりゃ残業でカバーするしかないですし、ユーザーの目が届かない分、無制限に仕事ができます(笑

長時間労働になる原因って単純に仕事量に対して労働力が足りてないってことじゃないですか。

だったら労働力を増やせればいいんですけど、IT業界は(安く働ける人がいないという意味の)人手不足ですので、それも難しい。

ならスケジュールをいじるしかないのに、それも無理と。なぜなら当初の計画を変更したくないから。

私はこういうやりとりを何度かユーザーや周りの技術者としてきたのですが、そもそも計画自体にかなり無理がある場合は計画の見直しをするべきです。

最悪なのが、社内の稟議がなかなかとおらないなどユーザーの都合で開発着手がどんどん遅れたにもかかわらずカットオーバーは当初のままとか。でもこの最悪が”あるある”なのでたちが悪い(笑

ぶっちゃけどうしてもカットオーバーに間に合わせたくて、それが本当に価値のあることであれば資金を投入してでも、間に合わせればいいんですよ。単価をあげれば人は来ますからね。

金を出せないということは、所詮そのレベルでの要求ってことがなぜ分からないんでしょうかね。

労働力が確保しづらいという状況を前提に言わせてもらうと、長時間労働の原因は無謀な計画を立てるユーザーにもあります。

もちろん私も含め開発側も仕事を取りたいためにかなり厳しいなと思いながらも受け入れてしまったりするので、それもよくないと思います。

私は根性論とか気合いで乗り切るみたいなノリが大嫌いなので、ユーザーと直接対決できる立場であったりすると相当バトルこともありますし、それが原因でプロジェクトから退場させられたこともあります(笑

ユーザーを教育する

でも結局仕事をもらう立場からするとユーザーの要求は受け入れざるを得ないじゃないの?

確かに現実そういう側面もあります。どうしようもない状況があるのもまた事実。ただ交渉次第では状況が好転することもあるうることです。

ただし、交渉するためにはお互いにシステムに対して最低限の共通理解がなければなりません。

なので私はエンドユーザーと接する必要がある場合は、常に彼らを教育することを意識しています。

教育っていうとなんだか偉そうですが、エンドユーザーというのは大抵ITのことをそれほど知らない人たちです。情報システム部門に所属している人でさえ、プログラムを全く触ったことがないという人は結構います。

そういう人たちは画面を1つ作ったり、帳票の書式を変更するのにどれだけの時間と費用がかかるのかあまりよく分かっていないのです。

そういう人たちに機会があるごとに一つ機能を作るのにどれぐらい時間がかかるのか、その根拠も添えてできるだけ分かりやすく説明するように心がけています。

また、ちょっとした仕様変更や機能の追加をするにしても、そのことによってどれだけの作業が発生するかなどもできる限り詳しく伝えるのです。

そうすることにより、ユーザーにもシステムにかかるコストの感覚が身につき「こういう依頼をしたらこれぐらいの時間とコストがかかるだろう」というような判断がしやすくなります。

私の場合はこれをすることにより、当初は無理な納期ばかりを言ってくるユーザーがだんだんと納期に対する認識が変わり、スムーズに取引できるようになったというようなこともありました。

ユーザーも巻き込むべき

長時間労働に関しては、上で述べたようにユーザーとの付き合い方も密接に関係していると思っています。

ですので単純に客先常駐をなくすというよりも、ユーザーを巻き込んだ取り組みが必要だと思っています。

当然、「安い労働力が人手不足」というおかしな業界構造を変えることが一番の長時間労働の改善に寄与するのは言うまでもありませんが・・・。

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